黒空手家哀歌(バカエレジー):ピノキオ、空手バカを噛む。

9月5日金曜日のグラバカ東村山

10日ぶりに練習に顔を出した福良と、翌日の土曜日に勝負を控える谷沢が同じマットの上

何も起きないはずがなく。

『堀さん、僕の帯なんか長くないですか?』
不敵な笑みを浮かべながらそう語りかけてくる谷沢

そうだね、と返すと
『まあ僕福良さんと違って練習してるんで、そのせいで伸びちゃったんですよね』

嘘をつくと鼻が伸び、練習をすると帯が伸び、デートの話をすると鼻の下が伸びる谷沢。
色々なところが伸びる男ですが、いまだに先生や諸先輩方へのタメ口や舐めた態度をとる男・谷沢。
人格的な伸び代はまだまだありそうです、勿論悪い意味で。

後輩であり、どちらかと言えば谷沢を捕食する側の空手家・福良が当然そんな発言を許すはずもなく、瞳の内には静かな怒りの焔が燃えていました。

その後の柔術スパーリングで谷沢は福良に負け
『いやぁ、普通に負けちゃいましたね』とヘラヘラした様子。

しかし、因縁深い二人がこんな対決で納得するはずもなく、クラス後には見計らったかのようにパウンドグローブを付け出す谷沢と福良。

さすがにコンバットな柔術かと思いきや、当然にナンデモアリの死合いが勃発。

打撃で圧倒すると思いきや、これまで積み上げた空手を捨て谷沢に組み付きヘンゾフックからバックテイクを狙う福良。

普段から『空手最強!』が口癖の福良ですが、勝つためなら20年以上も共に過ごした空手を捨ててまで勝ちにこだわる貪欲さが、むしろ彼を空手家たらしめているのかもしれません。

しかし、途中で捨てられた空手が福良を許すはずもなく、せっかくとったバックポジションからも逃げられ、反対に柔術一辺倒ピノキオこと谷沢の三角絞めの前にあえなく散っていきました。

まさに窮鼠猫を噛む。

その後は福良に闘魂を注入する為に精神と堀の部屋でマンツーマン練習。
体もそれなりに大きいし練習になるかな、受けもそれなりに強くなったしそれなりに練習になるだろう、『三角絞めってどうやって防いだら、逃げたらいいんですか』なんてまたもや寝言のようなことを言っているけどきっと練習になるだろうな、と自分に言い聞かせてスパーリングをしていると、明らかに様子のおかしい福良。

『ちょっと休ませてください』
『いや、場所を変える時くらいは水飲んだっていいんじゃないですか』
黒空手家のくせに偉くまとも?なことを口にする福良を前に自分は言葉が出ませんでした。

もちろん頑張ったのは最初の1,2本とラスト1本のスパーリングだけ。
それ以外は必殺の擬死で相手の体力をひたすら奪い、最後の最後で全力投球。

まるで夏休み最終日に慌てて宿題をこなす小学生の絵日記のようでした。

黒空手家の割に根性ないなぁと思っていましたが、絶対に56されないという自信があったからこその擬死だったのでしょう。
なんなら死に体でのスパーリングの他にブラジリアンタップしたり、手を替え品を替え生存に向けて足掻く姿はいっそ清々しい。

精神も足腰も弱い空手家って存在価値あるんでしょうか?

『MMAでは負けましたけど、柔術スパーでは勝ったので』という言葉を残してマットを後にする福良。

谷沢のアンサーは
『でも最後に勝ったのは僕なので、死体は喋らないでもらっていいですか?(笑)

どうやらこの2人の因縁はまだまだ続きそうです。

堀(文責 : 黒空手家ハンターこと谷沢朋紀)

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